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2012年12月8日 更新

腎動脈下大動脈再建術における周術期出血がβ遮断薬の保護効果に及ぼす影響
Impact of Perioperative Bleeding on the Protective Effect of β-Blockers during Infrarenal Aortic Reconstruction.

β遮断薬の周術期使用は未だ議論の余地がある。術後心合併症については保護的な効果があるとする研究がある一方、術前にβ遮断薬を導入すると死亡率が上昇するとする研究もある。
本観察研究では1801名の大動脈再建術を受ける患者を対象とし、β遮断薬による治療の有無を比較し、術後の心臓、非心臓に関する転帰についてpropensity scoreを用いて前向きに評価を行った。輸血の必要性から推定された術中出血についてβ遮断薬の影響を分析した。
院内死亡率は2.5%(n=45)であった。β遮断薬の使用は術後心筋梗塞の頻度(OR = 0.46, 95% CI [0.26; 0.80])、心筋壊死の頻度(OR = 0.62, 95% CI [0.43; 0.88])を低下させたが、多臓器不全の頻度は増加した(OR = 2.78, 95% CI [1.71; 4.61])。重度の出血があった患者では(n=163;9.1%)、院内死亡率(OR=6.65、95%CI[1.09-129])、多臓器不全(OR=4.18、95%CI[1.71-4.61])の頻度が著明に増加していた。さらに死亡患者の28%にだけ術後心筋梗塞が認められ、術後心筋梗塞を起こした患者の69%に過剰な出血があった。
周術期のβ遮断薬による治療は術後心イベントの低下をもたらす。周術期出血の少ない大多数の患者ではβ遮断薬の効果は保護的である。それに対し、高度出血を呈した患者では死亡率や多臓器不全の頻度が増加していた。

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